高島平ビールプロジェクト

高島平ビールは「高島平に特産品を作ろう!」を合言葉に、高島平ビールプロジェクトが企画し発売したビールです。メンバーは、組合や団体ではなく、高島平を盛り上げたい有志の個人(飲食店、デザイナー、商業者など)の集まりです。

高島平ビールプロジェクトを立ち上げた背景

現在、高島平には周辺地域を含め10万人近い人が生活をしています。たくさんの人が住む一方、大手チェーン店や、大手コンビニ・スーパー、ネットショップを利用する人が多く、個人規模の商店や飲食店との繋がり、さらには地元の企業や、団体・町会等のコミュニティーとの繋がりを持つ人は多くありません。
僕も数年前に実家の酒屋に入るまでは、高島平に住みながら、モノを買うのは勤務先に近い丸の内やネット、生活必需品は大手ショッピングモール、スーパー、飲食はチェーン店、子供と車で地方に遊びに行き、町会にも未加入、という生活をしていましたし、何も不自由さを感じていませんでした。その時は気付きませんでしたが、「生まれた町」という愛着を除けば、他のどこに住んでも良かったのだと思います。むしろ高島平には魅力的な店やイベントも少なく、商店はどんどん閉店し、介護施設や老人ホーム、マンションや駐車場に置き変わる、退屈な街だと感じていました。
一方酒屋に戻り、地元で働く側になると「人は多いけど地元の人が地元で消費をしない」、だから店やサービスが育たない、他の地域から起業したい・出店したいと思う人が現れない、廃れていく、という悪循環に見えました。このギャップを埋めるためには、一の矢、二の矢と、地元の人間が色々な取り組みをしていく必要があると感じました。

高島平の景色

高島平は約50年前までは田んぼで、高島平団地の完成と共に急速に人が移り住み、都市部で働く人のベットタウンとして造られた街です。そのため歴史的な寺院仏閣は無く、それに関連した祭りや神輿などもありません。地元の名産品、伝統工芸や農作物などもありません。仕事柄、全国各地の特産品を頂きますが、自分が地方を訪ねる際は、池袋や、赤塚、成増で手土産を購入しなければなりませんでした。そんなこともあり「高島平と名の付く、人に勧められる特産品が欲しい」と考えていました。

無いなら造ろうと考えたのが「高島平ビール」であり、それをきっかけにした高島平内での繋がり造りが「高島平ビールプロジェクト」です。まずは高島平で愛される商品とすべく高島平ビールを生み出し、そのビールをきっかけに、高島平に住む人と人を繋ぎ、高島平に来たい、住みたいという街の魅力向上に貢献したいと思っています。

高島平ビール

高島平ビールが出来るまで

2018年春、企画書を作成し数名で始動しました。同じ板橋区内に2018年にできた醸造所「東京エールワークス」様に相談をしたところ、来年には瓶詰機を導入予定とのことで活動を一時中断し、設備の導入を待つことにしました。

2019年春~夏、瓶詰機が導入されたとの一報を受け打ち合わせを開始しました。同時に地域の飲食店さんや仲間にも参加してもらい「高島平ビールプロジェクトチーム」として活動を開始しました。醸造所見学や、試飲会、ラベルの議論などを行いました。

高島平ビールプロジェクト

順調に打ち合わせを進め方向性は見えたものの、実現に向けては高いハードルがあり、東京エールワークス様での製造を断念しました。
高島平はベットタウンで外から来る人が少ないため、観光地のビールのようにたくさんの人に飲んでもらえるビールではなく、狭い地域の同じ人に繰り返し飲んでもらえる美味しいビールを造る必要がありました。ワクワクと楽しくなるようなビール、そして高島平と名前を付ける以上、美味しさに妥協はしたくない。ただそうすることで、製造量やコスト、流通・保管方法などに課題があり、実現が困難になってしまいました。

2019年夏、委託醸造先は決まらないものの、地域の情報誌 高島平新聞さんで大きく取り上げて頂き、地元の方から注目を頂くようになりました。たくさんの醸造所のビールを取り寄せ、ブラインドでの試飲会と議論を重ね「華やかな香り、爽やかな苦みと少しのコク、爽やかな余韻」「贅沢感のあるビール。クセの強いビールではなく、比較的多くの方に喜んでもらえる味わい。」「ラベルには高島平をイメージするモチーフを盛り込む」など、徐々に詳細なイメージが固まっていきました。合わせて、提供価格、流通・保管方法、など、実現に向けてできる事、できない事を議論していきました。

高島平ビールプロジェクト

そして自分たちがイメージした高島平ビールの「美味しさ」をもっとも的確に表現してくれるであろう委託醸造先として「ベアードブルーイング」様にお願いをしようと決めました。全てのビールを生ホップ、無濾過、瓶内二次発酵で造り、バランスと複雑さのある個性的なビールを造る醸造所です。
伊豆修善寺にある醸造所に伺い、そこでベアードご夫婦のビールへの熱い想いをお話頂きました。その中に「本当に優れたクラフトビールは、飲むたびに新しい気付きを与えてくれる。」というお話があり、高島平ビールもそういうビールありたい、「ぜひここで造ってほしい、他の醸造所は考えられない」と、とても一方的なお願いでしたが、高島平ビールを造って頂けることになりました。

高島平ビールプロジェクト

2019年秋、醸造所との連絡を取りながら、高島平在住のデザイナーMieさんを中心に、ロゴマークとラベルデザインを決めていきました。ロゴマークは4つの案からFacebookなどで人気投票を行い決まりました。ラベルはワクワク楽しい雰囲気のピンクと黄色を多く使ったデザインで、いたばし花火大会、高島平団地、三田線など、高島平の町にゆかりのあるモチーフを多く使いました。

高島平ビール

そして、いよいよ2019年12月1日。地域の皆様の大きな応援を受け、高島平マルシェを皮切りに一斉に提供が始まりました!高島平に根差した個人経営の飲食店さんの力をお借りすることで、高島平全域での提供を可能にして頂きました。(本当は個人経営の酒屋さんでも提供してほしかったのですが、子供の頃に高島平に約20件あった酒屋は、今は2店だけになってしまい実現できませんでした。)

高島平ビールが飲める店は「みんなで高島平を盛り上げよう!」という考えに共感頂けた、高島平愛に溢れたお店です。2020年4月現在、高島平地域23件、近隣地域3件のお店で、高島平ビールを楽しむことができるようになりました。